ANEMONE
ANEMONEについて

ANEMONEについて

ANEMONEは環境DNAを利用した生物多様性観測網です。大学や企業、行政、地域住民が連携することで全国をカバーする生態系ビッグデータを獲得、提供しています。

理念と目標

環境中に存在する生物由来のDNA(環境DNA)を利用した生物多様性観測が革新的ツールとして広がりつつあります。環境DNAを利用した生物調査は、現場作業の簡便さ、高い生物検出能力、生物同定に関する高い専門性を必要としないこと、高分類解像性能といったユニークな特徴を備えています。これらの特徴のおかげで、旧来の生態系観測では容易ではなかった、広範囲における多地点・高頻度の生物多様性観測が実現可能になりました。

環境DNA観測のポテンシャルを最大限に利用するには、そこから得られるデータの特性を理解し、それに見合ったデータ解析手法を開発・発展させるとともに、観測関連技術を深化させ続けることが必要です。そのためには、新たに開発された技術をテストできるプラットフォームと、誰でも利用可能な観測データが提供される必要があります。それを実現する最善の方法の一つは、科学者の手による観測体制を確立することでしょう。

また、生物多様性保全の重要性がますます高まる一方、これまでの保全の取り組みは必ずしも十分と言えません。生物多様性保全に向けてのさらなる努力の拡大が求められる中で、生物多様性の時空間的な変動の正確な把握が鍵となることは火を見るよりも明らかです。今後の生物多様性保全の取り組みの中で、共通手法に基づいて実施される環境DNA観測が提供する生態系情報は、行政、産業、教育といった様々なセクターがそれぞれの役割を果たす中で重要なリソースとなるでしょう。

ANEMONEはこれらの科学的・社会的要請に応えるべく立ち上げられた科学者有志による環境DNA観測ネットワーク構築の取り組みです。幅広い産官学民の主体が協力することで、日本全国の沿岸、湖沼、河川等を対象に、統一された手法によって大規模かつ高解像度の環境DNA観測を実施します。得られた観測データは、生物多様性保全や生態系の持続的利用に貢献するために、オープンデータの精神に則って速やかに公開されます。この取り組みによって、環境DNA観測によって得られる高度な生態系情報の活用が進み、生物多様性保全の意義がこれまでにも増して理解され、促進されることを願っています。

ANEMONE概要

これまでの全観測地点(2022年時点)
これまでの全観測地点(2022年時点)

ANEMONEの前身となったのは、CREST「環境DNA分析に基づく魚類群集の定量モニタリングと生態系評価手法の開発」で実施された多地点での魚類を対象とした環境DNAメタバーコーディング観測です。2017年に実施された調査では世界的にも例のない全国の500を超える地点での調査により1,200種以上の魚が検出されました。2018年には魚類群集の季節変動を把握するため、全国数十地点における高頻度観測が実施されました。これらの観測で、採水・試料作成〜環境DNA分析〜データ解析に至るノウハウが蓄積されました。

ANEMONEは大学や国立研究所等の科学者が企業や市民と連携して環境DNA観測を実施するために2019年に設立されました。採水・濾過作業や環境測定などのフィールド調査は各地域の科学者や研究機関によって実施されています。日本長期生態系観測ネットワーク(JaLTER)や水産研究・教育機構、マリンバイオ共同推進機構(JAMBIO)に属する期間が大きく貢献しています。観測を支えるANEMONEハブが筑波大学山岳科学センターに設置され、観測キットの提供や試料受け取り等のロジスティックスを支えています。試料分析は、主としてかずさDNA研究所と水産研究・教育機構において、バイオインフォマティクス的解析は東北大学大学院生命科学研究科において実施されています。得られた環境DNA塩基配列データと群集組成データは専用のデータベース「ANEMONE DB」において無料で提供されています。

ANEMONEは市民科学のプラットフォームとしても機能しています。2020年より、NPO法人アース・ウォッチ・ジャパンと東北大学、北海道大学、京都大学の連携のもと、株式会社カカクコムの支援を受けて、日本全国の市民と連携した沿岸調査が実施されています。この調査では、コンパクトな調査キットとわかりやすい調査マニュアル、ビデオマニュアル等を活用して、地域住民等による生物多様性調査の体制が構築されました。参加した市民ボランティアは自らが選定した海に出かけ、環境DNA調査を実施しています。ここから得られたデータは、観測に貢献した市民ボランティアと共有され地域の自然を知ることに使われるだけではなく、ANEMONE DBに収納されて幅広い活用が可能となっています。

定期観測サイト

2022年3月の時点で77の定期観測サイトが稼働しています。55が沿岸サイト、18が河川サイト、4が湖沼サイトです。2022年10月時点で、調査実施地点は1000地点、調査回数は5000回を数え、900種にものぼる魚種が検出されています。

定期観測サイト(2022年6月時点)
定期観測サイト(2022年6月時点)

データベース

ANEMONEの観測から得られた生物多様性データはオープンデータベース「ANEMONE DB」において公開されます。生態系は社会全体にその恵みを与えてくれる社会共通の財産です。あらゆる主体が協力しながら維持管理できる体制づくりに貢献すべく、全てのデータは無料で公開されています。

ANEMONE DBトップページ
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ANEMONE DBへのリンク

ANEMONE DB検索マニュアル